こんな理想的な出会いは、もうないだろう ー 社員数100人に満たないベンチャー企業が計画よりも2年早くM&Aに踏み切ったわけを社長が本音で語る

こんな理想的な出会いは、もうないだろう ー 社員数100人に満たないベンチャー企業が計画よりも2年早くM&Aに踏み切ったわけを社長が本音で語る

山本 裕次

山本 裕次

Yuji Yamamoto

1990年に関西大学工学部を卒業後、野村證券に入社。その後、外資系証券会社やサイボウス株式会社の取締役、執行役員などを経て、2010年にサイボウズスタートアップスの代表取締役社長に就任。2019年よりトヨクモ株式会社へ社名変更、同年より代表取締役社長を務めている。

小澤 卓馬

小澤 卓馬

Takuma Ozawa

大学卒業後、中堅~大手SIer2社でプログラマー・SE(システムエンジニア)・PM(プロジェクトマネージャー)の経験を経て、ゼロからスマホアプリやWebサービスを作りたいという思いから起業。2012年に株式会社プロジェクト・モードを設立し、現在も同社にて代表取締役を務めている。


トヨクモ株式会社(以下、トヨクモ)は、2025年1月に株式会社プロジェクト・モード(以下、PM社)の株式を取得し、子会社化しました。

当初、トヨクモはM&Aの実施を2027年以降の計画としていましたが、今回の子会社化は計画より2年早いタイミングでの実現となりました。これは、同じビジネスモデルを持ち、信頼できる経営陣を有する両社の出会いがあったためです。

2025年最初のToyokumo insideでは、トヨクモとPM社の両代表が今回のグループ化に関する想いを語ります。

見える数字へのこだわりを持つトヨクモ、事業拡大の手段としてM&Aを選択した

ー2027年頃に事業拡大と言っていましたが、どのような事業拡大を考えていますか?

山本:事業拡大をする手段はいくつかありますが、選択肢の一つとしてM&Aを考えていました。

社内では2023年の年末から、IR資料では2024年2月の2023年12月決算の説明から2027年には積極的な事業拡大フェーズに入ると説明していました。

私たちはグロース市場に上場するベンチャー企業ですから当然、事業拡大は必須となります。
拡大の手段として新規事業もありますが、企業規模が大きくなるにつれて新規事業も徐々に大きな市場へのチャレンジが必要となります。

しかし、その新規事業の拡大には時間がかかるうえに、その成功確率はそれほど高くありません。

そこで、選択肢として出てくるのがM&Aというわけです。

ある程度成長しているサービスを買収するということは、その企業がこれまで成長に費やしてきた時間を買えるだけでなく、ある意味「勝者」をグループに加えるのですから、その後の成長率も維持しやすくなるわけです。

ーなぜ、そこまで成長率や利益など見える数字にこだわりがあるのでしょうか?

山本:トヨクモを日本を代表する世界基準の誇れる会社にしたい思いがあるからです。

必ず世界のマーケットで世界の企業と戦う必要があります。そう考えると人材獲得競争も世界レベルで勝てる必要があるわけです。
それぐらいの生産性を維持できない会社は生き残っていくことが、どんどん厳しくなるのではないでしょうか。

IT企業は本当に人材が全てです。優秀な人を採用できるか、これで未来が決まってきます。
そのために、利益にもこだわり、平均年収にもこだわっているわけです。

身の丈を過信せず冷静に考えた上で決断した、理想的な企業と手を組む選択

ーでは、当初考えていた事業拡大の時期を2027年から2025年に変えた背景はなんだったのでしょうか

山本:まずは、2027年と言っていた理由から話しましょう。

M&Aを考えるのであれば、選択肢は「小さな会社を数多く買収する」または「大きな会社を少数買収する」になります。
では、どちらが良いでしょうか?
この問いに関して、私は大きな会社を少数買収する方が良いと考えています。

なぜかというと…
例えば、小さい会社だったら誰かに任せておいてもいいだろう!とはならないわけです。伸び代もあるので、支援出来ることも多くあると思います。

大きな会社の場合は、失敗した場合のリスクも大きいので、できる範囲のことをより真剣にしようとするでしょう。
つまり、小さな会社を買収しても、大きな会社を買収しても、支援に費やす力はさほど変わらないと思っています。
であれば、会社の身の丈に合った、しかしできるだけ大きめの会社を買収するべき!と当初は考えていたわけです。

しかしながら、そのような企業は100億円はくだらないのが実情です。
そしてトヨクモがその100億円ののれんの償却をしても赤字にならずにチャレンジできる規模に到達するのが…2027年頃になると見込んでいたわけです。

左から山本さん、石井さん(トヨクモ取締役)


ーここまでが山本さんの元々の想定だったわけですね。

山本:そうなんです。
2027年の実現に向けて、2024年からM&A情報を積極的に収集し始めました。

国内企業は比較的リーズナブルですが、探しているようなビジネスモデルの会社は見つかりませんでした。
トヨクモが目指す、「ITの大衆化に貢献できるような誰でも、簡単に利用できるサービス」を展開する会社には出会えませんでした。

逆に海外は驚くほど高く、想定している金額では全然買えそうもないと思いました。本当に困ったものです…
海外戦略については、また別の機会にお話しするので今回はここで止めておきますが、そんな中でモヤモヤしていた中で出会ったのがPM社でした。

・提供しているサービスがトヨクモが行いたいような情報サービス事業であること。
・PLG(Product-Led Growth)のビジネスモデルでトヨクモと同じであること。

一目見た瞬間から、これは良さそう!と直感的に感じました。

調べていくと、ITreview Best Software in Japan 2024では7位を獲得し、しっかりと市場評価も得ています。(PM社リリース
実はトヨクモの安否確認サービス2は17位なので、PM社のサービスはトヨクモ以上の成績なんです…(笑)
さらには堅実経営で、黒字を実現しながら成長している…
資本金も少なく株主も少数でベンチャーキャピタルも入っておらず独自の経営方針を貫いている…

私の知っている情報の中で、このような会社は聞いたことがないので、正直信じられませんでした。
どんな人が経営をすればこのような会社を作れるのだろうか、本当にすごいな!と感じていました。

まさに当社が探している理想のような会社だったので、地面師たちのM&A版で、私を騙そうと思っているのかな?と逆に疑っていたほどです(笑)


ーPM社は疑ってしまうほど理想的で、まさに運命的な出会いだったんですね。
 であれば、ここからは比較的スムーズに話が進んだのでしょうか。

山本:いえ、ただ一つ「タイミングが想定より早い」という懸念がありました。
心配なことは、ただこれだけだったんです。

当時の私はこう考えていました。

「今のトヨクモの身の丈で大丈夫なのだろうか。
財務的には、問題のない範囲内ではある。
しかし、少数精鋭で活動している中で、活動に協力できる社内メンバーが少ない。
元々は2027年を意識していたので、自社のメンバー補充もまだ30%程度の印象だ。」

新しいチャレンジ業務を加えます!と言葉で言うのは簡単ですが、各自の負担も大きくなるのでは?など、いろいろと不安も大きかったんです。

企業が成長し続けるためには、適度な成長が良いと考えています。数多くの新規事業やM&Aを行って短期的に売上を伸ばしてる会社で、一見すごく成長しているように見えるのですが、内部ではマネージメントチームがバラバラになって急速に経営が悪化していく…そんな事例は意外と多いんです。

だから、トヨクモも身の丈を過信することはなく冷静に考えたつもりです。

で、私の出した結論は、今回のプレスリリースの通りです。
最終的に「このような出会いは、もうないだろう。」と感じ、決断しました。

意思決定で大きく影響したのは、PM社の経営陣への信頼です。
トヨクモ側の準備は30%程度ですが、PM社への信頼が何より大きかったと感じます。
なので、トヨクモから信頼できるメンバーをたくさん協力させる必要がなかったわけです。

この事業をともに成長させることで、信頼できるメンバーの採用も一緒にできてしまう。
トヨクモの経営課題を一石二鳥で解決できる、まさに最高の選択でした。

PM社だったからこそ2年も早い2025年に実現できたと言えるでしょう。
予定よりも少し早く次のステップに入りますので、トヨクモメンバーにとっては更なる成長の機会ですね!

ーPM社への厚い信頼で、予定よりも2年早い事業拡大の一歩になったわけですね。

売買契約書に押印をする山本さん


ープロジェクト・モードとの相性はどうですか?

山本:今は、プロジェクト・モードの現状を確認している段階です。

トヨクモがやっていてPM社がやっていないこともありますが、逆にトヨクモが後回しにしてできていないことをPM社がやっていることもあります。また、それがすごいな〜と感じるくらい、実にしっかりやっているんですよ。正直、恥ずかしく感じるくらいです。

今後は、両社の状況を見ながら、良い活動に合わせていくことで良い相乗効果を生み出したいと思います。


ー今回のグループ化を機に、トヨクモメンバーへの一層の成長も期待されていますね。

山本:そうですね、やることがいっぱいです。
もうここからは伸び代しかないでしょう!!

お互いに理想とするのは「誰でも簡単に使えるサービス」であることと「少数精鋭のプロフェッショナル集団」


ーPM社代表の小澤さんにもお話を伺いたいです。
今回、トヨクモグループに入ることになりましたが、トヨクモへはどんな印象を持っていますか?


小澤:今回のM&Aプロセスを通じて、IR資料やYouTube動画を徹底的に読み込み、トヨクモについて深く知ることができました。

最初に驚いたのは、その従業員数の少なさです。
公開されている直近(FY2024)の売上予想が31億円だったので、従業員は300名程度かと想像していましたが、会社紹介資料を見ると約80名…さらに、開発やカスタマーサポートもすべて内製化されていると知り、想定以上の少なさに驚きました。
また、従業員の平均年収アップをIRで宣言し、ここ数年間確実に実現している点にも感銘を受けました。ものすごくホワイト企業だなぁと(笑)

トヨクモが少数精鋭のプロフェッショナル集団であると実感し、私自身もそのような経営スタイルを目指しているため、とても魅力的に感じました。

次に驚いたのは、「顧客ターゲット」と「販売方法」が当社と非常に似ている点です。

トヨクモの経営理念である「IT初心者でも安心して利用できるサービスの提供。ITの大衆化に貢献」という方針は、PM社が展開するNotePMの目指す方向性と非常に近いと感じています。

販売方法については、NotePMでは、トライアル環境を提供し、顧客がサービスを体験・納得した上で有償契約するPLG型の販売方法を採用しています。
この販売スタイルもトヨクモと一致しており、両社間での高い親和性を感じています。

PM社の経営陣3名、左から今田さん、小澤さん、薄根さん


ーそもそもNotePMはどんなサービスなのでしょうか?

小澤:NotePMは、マニュアルやノウハウをWeb上で簡単に投稿し、強力な検索機能で必要な情報をすぐに見つけられる「社内wikiツール」です。
これまで社内wikiツールは主にIT企業で使われてきましたが、NotePMは「誰でも簡単に使える」ことにこだわって開発したため、非IT企業を中心に支持されています。

ートヨクモ社内でもNotePMを効果的に活用して、効率化できるところはどんどん実践していきたいですね。

さらなる成長に向けて、両社が協力し大きなシナジーを生み出す


ートヨクモとプロジェクト・モード、今後この2社間でどのように事業を進めていきますか?

山本:まずは、トヨクモのマーケティング力で、NotePMを販売します。
NotePMはかなり成長性の高い事業だと思っているので、2社の力を合わせて伸ばしていけると信じています。

小澤:トヨクモは、当社に近い顧客層と販売方法で大きく成長しているため、特に「パートナー販売」や「展示会」、「マス広告」、「オンラインマーケティング」といった領域で豊富な実績があります。これらはPM社がこれまで十分に実施できなかった領域で、トヨクモのノウハウを取り入れることで、大きなシナジーが生まれると考えています。

トヨクモの成功事例を学び、自社の戦略に取り入れることで、新しいチャレンジが可能になるとワクワクしています!

左から薄根さん、小澤さん、今田さん


ー最後に、山本さんから一言お願いします。

山本:トヨクモとしては、上場してから成長を急がず、地道に基礎体力をつけることに集中していたわけですが、ここからさらなる成長に向けて動き始めたタイミングです。
正に大きな岐路にあり、待ちに待った第二幕の始まりですね!

このプロダクトを成長させられなかったらトヨクモの未来は暗いかもしれませんが(笑)
ただ、ここは得意な情報サービスのジャンルなので、自信はありますよ!

トヨクモグループはこれから新たな成長フェーズに入ると思っています。
ミッションに共感する方にジョインいただき、一緒に会社を成長させていけることをとても楽しみにしています。


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