渡部
Watabe
2021年中途入社。ソリューション営業部で安否確認サービス2のエンタープライズ領域を担当。従業員1,100人〜10万人規模の企業を対象に、社内で唯一エンタープライズ領域にKPIを持って活動している。NPO法人日本防災士会 品川ブロック監査役としても活動中。
「優先度は低いけれど、重要度は一番高い」――安否確認サービスの営業は、そういう仕事らしい。
企業が備えなければならないと分かっていながら、どうしても後回しにされやすい。そんな中で、この必要性を伝え続けている人が、トヨクモにいる。
トヨクモはPLG(Product-Led Growth)を追求する会社、「No form, No spam, No cold call」を掲げ、営業が説得して売るスタイルとは意図的に距離を置いている。それでもエンタープライズ領域でSLGのような活動をする部署が存在するのは、商談には「人の介在」がどうしても必要な場面があるからだろうか。
社内で唯一、大企業向けの営業にKPIを持って向き合う渡部さんに、この仕事の話を聞いてみました。
なぜ生命保険からSaaS営業に転じたのか
—前職の仕事内容を教えてください。
外資系の生命保険会社で、営業管理職候補として営業活動と所長補佐の仕事をしていました。
生命保険という商品は、無形商材としてとても奥深く、営業自体には大きなやりがいを感じていたんです。ただ、生命保険って、"出口"で感謝される仕事なんですよね。お客様にご不幸があったときに、ご家族から「ありがとう」と言っていただく。それは尊い仕事です。ただ、自分の性格的には、もっと早く、もっと明るい場面で介在価値を実感したいという気持ちが強くなっていきました。
—それでSaaS業界を考え始めたということですね。
そうですね、同じ無形商材でも、日常の中で価値を届けられる仕事がしたいと思って…
トヨクモについては、正直に言うと面接を受けるまで知らなかったんです(笑)。しかも面接で「うちはゴリゴリの営業はしないから、君の経験は生きないかもしれないね」と言われて、これは落ちたなと確信して帰ってきました。
だから、なぜ採用してもらえたのか、いまだによく分からないんです。
—実際に入社してみて、どうでしたか。
トヨクモは"いい意味で"効率主義の会社です。ゴリゴリの営業を経験してきたメンバーや、「営業とは何か」を突き詰めて考えるタイプの人は、私の入社当時あまりいなかった。この状況は、PLGを追求するトヨクモとしては当然だと思います。
自分としては前職で学んだ営業の哲学を、何らかの形で社内に残したいという思いがずっとありました。それが私が入社した意味なのでは、とも考えていて…
結果として、今の安否確認サービス2で使われている営業資料の構成やトークスクリプト、商談の型は、ほぼ自分が作ってきた自負があります。
また、お客様に直接販売する部署一筋を貫いているのも、社内で私だけです。
入社後に所属していた組織が再編されていく過程で、その流れとは別に新設されたのが現在のソリューション営業部です。担当は安否確認サービス2のエンタープライズ領域で、従業員1,100人から10万人規模の企業を対象に、契約までのサポートや、決裁者への直接説明などを担っています。
—渡部さんが活動しているエンタープライズ領域はSLG(Sales-Led Growth)に近く、トヨクモが実践するPLGとは別軸ではないでしょうか。
確かに、トヨクモはPLGを徹底的に追求していて、「No form, No spam, No cold call」を掲げ、営業が説得して売る会社ではありません。
そんな中でソリューション営業部は、PLGでは拾いきれていないビジネス機会を確実に回収しながら、そこで得た知見を仕組みに変えてPLGに還元することをミッションとしています。狙いは単価向上や事業拡大にとどまらず、「この動きが効いた」という再現性のある勝ちパターンを社内に蓄積していくこと。
PLGを主軸とする会社の中で、その精度をさらに高める役割を担う、そんな戦略的ポジションだと捉えています。
誤解のないようにお伝えすると、会社としてSLGとPLGのハイブリッドを目指しているわけではありません。あくまで全体としてはPLGを追求していて、その中でエンタープライズ領域の属人的な知見をどこまで「仕組み化」に昇華させられるかが、私に課せられた課題だと思っています。
近い将来、産業構造の変化によって中小企業は減少し、大企業への集約が進む可能性が高いと言われています。そのとき、大企業との関係性や実績のないサービスは、グループ全体の見直しやリプレイスの対象になりやすい。だから今のうちから大企業をしっかり押さえておくことは、「中長期の成長基盤」にもなります。エンタープライズ案件は、導入後の横展開やグループ展開に発展しやすく、MRR積み上げの起点にもなる。ここを戦略的に抑える意味は、決して小さくないはずです。
—この仕事でいちばん印象に残っている瞬間はどんな場面ですか。
大口契約をいただいたお客様から、稟議が通ったタイミングでご連絡をいただくことがあります。
そのときに「渡部さんのおかげで通りました」「本当にありがとうございます」と、心から嬉しそうに言っていただける。その瞬間ですね。
—稟議を通すのは、難しいものですか。
そうですね…安否確認サービスの導入稟議は、"優先度は低いけれど重要度は高い"という、最も通しにくいパターンなんです。
決裁まで辿り着くには、ご担当者の方が社内で丁寧に説明を積み重ねてくださっている。商談を通じてこちらはその道のりに並走させていただく立場です。
だから稟議が通ったときの連絡は、単に契約が取れた瞬間というよりも、ご担当者の方の社内での仕事が成し遂げられた瞬間でもある。そこに自分が少しでも力になれていたなら、営業冥利に尽きると思います。
説明員と営業マンは何が違うのか
—商談で大切にしていることを教えてください。
機能説明だけで終わらないことです。スペックを伝えるだけなら、それは"説明員"の仕事だと思っています。営業マンの仕事は、お客様の課題を解決すること。営業の本質は課題解決だと考えています。
だから商談では、機能の話だけにとどまらず、防災の周辺知識や業界の動向まで含めてお話しするようにしています。そうすると、お客様は「このシステムを売りに来た人」ではなく、「防災領域を幅広く理解しているパートナー」として見てくださるようになる。
安否確認サービスは、製品単体での差別化が難しい領域でもあります。だからこそ、「渡部さんがいるからトヨクモが良さそう」と感じていただけるかどうか。自分自身が選定ポイントになれるようなコミュニケーションを意識しています。
—仕事観として「これだけは譲れない」ということはありますか。
「説明員ではなく、営業マンになれ」「プロダクトセールスではなくニードセールスを」「すべては"For You"である」。
この3つは、前職で叩き込まれた言葉で、今も変わっていません。商品のスペックをそのまま伝えるのは誰にでもできる。営業にしかできないのは、見込み客の課題を解決することだと思っています。
この"For You"という考え方は、トヨクモが掲げる「公明正大」というバリューと自然に重なる部分があるんです。情報をフラットに共有し、お客様に対しても本当に必要なものをお伝えする。自分が大切にしてきた姿勢と、トヨクモのバリューが交わる場所がここにある。
この重なりがあるからこそ、今の環境に納得感を持って向き合えています。
気づけば、また「いざというとき」の仕事をしていた
—冒頭で「もっと明るい場面で」とおっしゃっていましたが、安否確認の仕事もいざというときのための備えですよね。
そうなんです、気づけば再び「いざというときのための備え」を提供する仕事をしているんです。逆説的ですが、これは巡り合わせだと受け止めています。前職で学んだ「出口ではなく、入り口で価値をどう言語化するか」という技術が、安否確認サービス2のセールスに活きているのは間違いありません。
お客様が想定されているのは、首都直下型地震や南海トラフ巨大地震のように、会社の存続そのものが問われる規模の大災害です。本当の意味で価値が試されるのは、その規模の有事の瞬間。だから入り口で、この必要性をいかに腹落ちしていただけるかが重要になると感じています。
—世の中に必要とされているという実感はありますか。
一番強く感じるのは、大きな災害が起きた直後です。
不謹慎に聞こえたら申し訳ないんですが、災害の翌日から問い合わせが確実に増えます。それは「他人事だったものが、自分事になった」瞬間であり、安否確認という仕組みが、本当は常時必要とされていることの裏返しでもある。
私たちの仕事は、普段は優先度が低く見えるものを、優先度が高いまま意識し続けていただくことなのかもしれない、と思っています。
—ニッキンへの連載寄稿など、外部への発信も続けていますね。
ありがたいことだと思っています、自分の宣伝になるからという意味ではなくて。
安否確認やBCPというテーマに、社会として関心が向き始めている証左だと感じるからです。自分が寄稿したり話したりすることが、誰かの「そろそろ備えないとな」という一歩につながるなら、これ以上の意義はないなと。メディアでの発信は、市場全体の理解度を底上げする活動だと捉えています。
執筆を続けることで、商談とは別の気づきもありました。
文章や動画コンテンツにするとなると、「なんとなくこの表現で伝わる」が通じません。一度自分の中で完全に分解して、構造的に組み直す必要があります。その過程で得た整理が、そのまま商談の引き出しになる。執筆で鍛えた力が商談で活き、商談で得た生の反応が執筆の題材になる。このサイクルが自然と回り始めていることは、想像していなかった恩恵だと感じています。
—最後に、今後の抱負を教えてください。
自分が前職から持ち込んだ営業の哲学を、トヨクモの中に仕組みとして残すこと。それが一つ目の目標です。
もう一つは、TMMというトヨクモが追求するモデルをもっと深く理解して、自分の営業観と融合させていくことです。
TMMは「顧客が自ら選ぶ仕組み」を突き詰めるモデルで、人が説得して売る発想とは根本的に違います。
その乖離は、自分自身でも感じています。ただ、営業を理解している人間がTMMを目指すのと、知らずに目指すのでは、顧客の本質にたどり着ける深さが変わってくると思っていて。その両方を兼ね備えたハイブリッドな存在になることが、今の目標です。
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