ユニークな福利厚生よりも、給与と生産性の向上にこそ投資する - 会社の成長に繋がる「人的資本経営」のあり方
2025/11/12
近年、人材をコストではなく資本と捉えて長期的な企業価値の向上を目指す「人的資本経営」を実践し、選ばれる会社となるための取り組みを行う企業が増えています。その中で、従業員の働きやすさを向上させる手段として、福利厚生の充実を重視する企業も少なくありません。
しかしトヨクモは、あえてユニークな福利厚生には重きを置かず、人的資本こそが最も重要と捉え、独自の投資対象を設定しています。
本記事では、トヨクモ独自の「投資するもの/しないもの」という視点から、その経営哲学をCFOへのインタビューを通してご紹介します。
トヨクモが考える『報酬』とは
まず初めに、トヨクモが考える報酬についてご説明します。
報酬には、仕事の対価として与えられる金銭や地位に加えて、「仕事のやりがい、人間的成長や福利厚生」などの目に見えない報酬も含まれると、私たちは考えています。
目に見えない報酬も非常に重要ですが、同時に金銭や地位という形で与えられる報酬も、トヨクモでは等しく重要であると考えています。
人材こそ、会社が最も投資すべき対象である
-トヨクモが「お金をかけるもの」と「お金をかけないもの」を区別する際の判断軸は何ですか。
「トヨクモの将来の成長に中長期的に貢献するか」という点が、投資判断の基準です。
この基準を満たすものには、積極的に投資したいと考えています。
一方で、トヨクモの成長に必ずしも必要とは言えないものや、公私の区別が曖昧なものには、Valueである公明正大の観点から投資を行わないことを原則としています。
トヨクモは特に「やらないこと」を明確に決める会社です。お金の使い道においても、その姿勢は例外ではありません。
-具体的に投資する対象を教えてください。
まず代表的な投資対象として挙げられるのが、正社員の人件費、すなわち「給与」です。
挑戦と成長を繰り返し、成果を出している従業員に金銭的報酬で報いることは、優秀な従業員のモチベーション向上に繋がり、ひいてはトヨクモの成長に直結すると考えています。
また、トヨクモは「平均年収を上げること」を重要な経営方針としており、現時点では福利厚生の充実よりも給与での還元に注力しています。
-様々な企業がユニークな福利厚生の制度を設けているのを目にします。
なぜトヨクモでは平均年収の向上に注力しているのでしょうか。
トヨクモでは利用者が限定される福利厚生は平等ではあるが公平ではないと考えています。それに対し、従業員の成果は必ずしも平等ではないので、成果に応じて公平に分配すべきです。
トヨクモの業績が向上したその先で、最も投資すべきは人的資本です。
当社では一人あたり売上を算出し、それを生産性に変換しています。この数字は毎年向上していますので、引き続きその生産性の向上をベースとして、平均年収をアップさせるべく経営を行っていきます。
さらに、この平均年収の向上は採用活動にも好影響をもたらすと考えています。
優秀な人材は引く手あまたです。その方々がトヨクモへの入社を決める付加価値の一つとして、自分自身の能力に見合った高い給与水準が挙げられるでしょう。優秀な人材の採用は、既存の従業員にとっても会社にとっても、素晴らしい成長機会に繋がると確信しています。
これらの理由から、平均年収向上へのアプローチは、従業員と会社の双方にとってWin-Winの関係を築くものと考えています。
成長に繋がるものには、惜しみなく投資をする
-他にも投資する対象はありますか。
優秀なメンバーが働きやすい環境という点では、家賃手当も金銭的報酬の一つです。
トヨクモでは、会社から2km圏内に居住する正社員に対し、家賃手当の福利厚生制度を設けています。
先ほど福利厚生は積極的な投資対象ではないと述べましたが、この家賃手当は生産性を高めるという観点から対象としています。
実際に利用する従業員にとっては、通勤時間の削減により満員電車のストレスから解放され、プライベートな時間も確保できます。また、家賃による家計圧迫の軽減に繋がり、生産性高く働ける環境の実現に貢献しています。
働く場所、すなわちロケーションに関しては生産性を高める要因になると考え、こだわりを持って選定を行っています。
また、奨励金50%の従業員持株会制度を設け、会社の利益を従業員に還元する取り組みも「金銭的報酬」と位置づけています。
持株会制度を利用すると、自身の仕事の頑張りが会社の成長に貢献し、ひいては自分の資産形成に繋がることを実感できます。
類を見ない高い奨励金を設定することで、「従業員一人ひとりが事業成長を担う大事な人材である」という会社のメッセージをこういった制度で形にし、モチベーション維持に貢献することが狙いです。
(持株会制度に関するインタビュー記事はこちら)
事業面では、広告宣伝や企業買収(M&A)にも投資したいと考えています。
CMをテレビや電車などでご覧になった方もいるかも知れませんが、トヨクモブランド価値を高めていくために、現在も積極的に投資をしています。
広告塔として、マスコットキャラクターのトヨクモちゃんもいますね。ぬいぐるみやキーホルダーなどをノベルティとして製作し、当社のお客様を増やす活動も広告宣伝活動のひとつだと認識しています。
M&Aについては、当社のMissionを共有できる企業があれば前向きに検討していきたいです。
実際に2025年にトヨクモグループとなったプロジェクト・モード社もトヨクモとの親和性が非常に高く、一緒にビジネスをすることで相乗効果を生み出せると確信できました。
このような良いご縁があれば、会社の成長のためにM&Aを検討したいと考えています。
トヨクモは、やらないことを明確に決める会社
-反対に、投資しない対象は何でしょうか。
先ほど述べた「会社の成長への関連性」に加え、トヨクモのMissionである「全ての人を非効率な仕事から開放する」ことに繋がらないものも、投資対象からは外れます。
例えば、他社ではよく見かける無料のウォーターサーバーやコーヒーはトヨクモにはありません。費用としては月数万円の設備ですが、投資対象ではありません。
類似するものとして、オフィスに設置するお菓子の自販機なども挙げられますね。会社にとっては費用がかからないものも、見えない管理コストを増やすことになるので、設置を行っていません。
そこに費用をかけるのであれば、極端な話、給料を全員に5000円プラスしよう、と考える文化です。

交通費や出張にかかる宿泊費についても積極的な投資は行っていません。
そもそも出張が少ないビジネスモデルではありますが、出張が発生する際には一定の基準を設け、過度に豪華な宿泊や不要な移動は避けるよう徹底しています。
その他、「公私の区別が曖昧なもの」にも投資はしません。これはいわゆる接待交際費が該当します。
驚かれるかもしれませんが、トヨクモの役員の接待交際費は0円です。誰がどのような目的で使用したのか不明瞭になりがちな接待交際費については、トヨクモのValueである公明正大に則り、投資の対象にはしていません。
将来的には変わるかもしれませんが、役員だから新幹線に乗る際は経費でグリーン席を予約できるという特権もないです。
交際費は使用しませんが、社内の懇親会費は別の見方をしています。
各本部に懇親会予算を割り振り、少し豪華に、できるだけ多くのメンバーで実施するようにしています。日頃の努力や成果を労い、部内のコミュニケーションを活性化させることが目的です。
こういった従業員に広く還元する取り組みは引き続き積極的に実施していきたいですね。
-なぜここまで、投資する対象について明言しているのでしょうか。
トヨクモが生み出すものは無形資産であるソフトウェアであり、それはまさに人が生み出すものです。その「人」へ投資することこそが成長の要となるので、ここにきちんと投資していくことを明言しています。
働く人、すなわち従業員に焦点を当てて生産性を向上させ、業績を向上させ、ひいては中長期的な企業価値の向上を目指しています。
トヨクモは今後も人的資本経営を実践し、従業員満足度が高い状態で生産性高く働ける職場環境の実現に注力していきます。